社会保障制度における保健医療の位置づけ
社会保障制度
現代社会は自らの責任において自立した生活を送ることになっています。しかし、すべての人が自立した生計を維持できるとは限りませんし、またいつ自立した生活が成り立たなくなる事態に見舞われるかわかりません。そのリスクを社会全体で緩和するのが社会保障制度です。社会保障制度には、公的扶助、社会福祉など対象者の状況に応じて様々な制度がありますが、誰もが避けて通ることができないのが、病気やケガです。安心して病院にかかることができれば、早期の社会復帰が可能となりますが、それを担保するのが保健医療です。一定の負担で医療を受けることができるので、安心できます。
社会保障制度の理念と役割
現代社会は自由主義の理念に基づいています。すなわち、個々人一人ひとりが自らの判断と努力により自立した生活を送り、その結果責任も個々人が負うという考え方です。しかしながら、誰でも年を取りますし、誰にでも疾病や負傷、障害などの働くことができなくなる事態に見舞われるリスクがあります。そこで、自由主義を修正して、自分の判断と努力だけでは解決できないリスクに社会全体で対応できるようにすることを目的としているのが社会保障制度です。社会全体で薄く広く負担し、万一の事態に見舞われた人に生活保障を行うことが社会保障制度の役割です。
社会保障制度の根幹たる保健医療
社会保障制度は、国民の生活を支えるセーフティネットの機能を持っています。国民が万一の事態に見舞われた際でも、その生活を支え、自立した生活に戻れるように支援を行います。国としての制度ですので、複雑な現代社会におけるリスクの下で生活するに当たって、安心感を与えてくれます。社会保障制度には、障害者や母子家庭などに対する社会福祉、特に生活が困窮している人に対する生活保護を中心とする公的扶助、そして社会保険、とりわけ病気になったときに一定の割合の医療費を負担すればサービスを享受することができる保健医療体制が社会保障制度の根幹をなしています。
社会保障制度における保健医療が果たす役割
日本では、すべての国民が公的な医療保険に加入する国民皆保険制度が取られています。これにより病気やけがをしても、一定の割合の医療費を負担すればいいので、安心して医療機関を受診することができます。さらに、入院が長期化したり、高度な医療を受けることにより、医療費の自己負担額が膨らむことがあります。その際、医療費の負担を軽減するため、医療費の自己負担の限度額を設定し、当該限度額を超えた金額は払い戻す高額医療費の制度があります。また、難病など特定疾患や人工透析などについて一定額が定められており、誰でも安心して治療できることが、保健医療の役割です。